野生の馬の噂!御崎馬とは?都井岬で会えるって本当?
みなさんは今でも野生の馬がいると思いますか?
このように問われると「いる?」「いない?」と自信のなさそうな答えが出てくると思います。
人間と馬との関わりの歴史は随分昔に遡りますが、馬は以前は群れで生活する野生の動物でした。
次第に人間に管理される馬が増えていきましたが、現在でも野生の馬はいるのでしょうか。
気になる疑問の答えをみてみましょう。
また、野生の馬について調べるとよく出てくる「都井岬」についてもご紹介します。
この記事で分かること
・野生の馬がいなくなった理由とは
・「都井岬」について
・馬好きさんにおすすめの関連書籍
野生の馬はいる?いない?
馬は古くから人間と関わりがあった動物のため、より速く走れる様に、より重い荷物を運べる様に、と調教・改良が重ねられてきました。
ターパンという野生の馬が1909年に途絶えた後は、唯一「モウコノウマ(蒙古野馬)」だけが、改良された事もなく一度も家畜になった事のない、本当の野生種の馬とされていました。
「モウコノウマ」の名前の由来は、「モウコ=モンゴル」と「ノウマ=野生馬」からきています。
かつては名前の通りモンゴルに多数生息していましたが、野生下では一度絶滅し飼育個体の子孫を野生に戻す試みが各地で続けられています。
ところが2018年のAFP通信によると、ゲノム解析の結果モウコノウマは純粋な野生馬ではなく、カザフスタン北部で約5500年前に飼育されていた「最古の家畜馬の子孫」なのだそう。
つまり、野生種とされてきた馬は全て「野生化した家畜馬」だったという事なのです。
このことから、野生の馬は今、地球上にいないということになります。
野生であろうと、飼われていようと、可愛い馬には変わりないのですが、野生の馬が地球上に居ない…と思うとちょっと寂しくも感じますよね。
アメリカのムスタングや宮崎県の御崎馬(みさきうま)は野生じゃないの?
野生の馬に興味がある方は、アメリカのムスタングや宮崎県の御崎馬が頭に浮かぶと思います。
しかし、どちらの馬も昔は人間が管理していた馬が野生に戻ったため、半野生と言われています。
ムスタングについて
ムスタングはアメリカの馬ですが、元々アメリカ大陸発見時には、馬はいませんでした。
15世紀ごろ、スペインの探検家が北アメリカの大草原に持ち込んだ小型馬が野生化したものといわれています。
インディアンはそれまで馬を見たことがなかったため、「魔法によって大きくされた犬」と理解し「メディスンドッグ」と名づけたほどです。
インディアンの生活は、馬の到来によって行動範囲も広くなり変化しました。
馬たちの中には逃げ出して野生化した馬も多く、そういった馬たちは「ムスタング」と呼ばれました。
このことから、ムスタングは人間に飼われていた馬が野生化した馬だということになります。
御崎馬について
一方、御崎馬は岬馬ともいわれ、江戸時代から続く武士の馬です。
体高130㎝前後、体重300キログラム前で、乗馬や競馬で見慣れたサラブレッドに比べると一回り小さく見えます。
この御崎馬は都井岬に牧場が開設されて以来300年以上の間、人為的管理をほとんど加えない放牧によって粗放に飼養され、繁殖と育成が自然に任されています。
しかし、御崎牧場では年に一度、寄生虫の駆除や健康診断などの保護活動を実施したり、御崎馬本来の特徴を守るために必要があれば牡馬を去勢したり、御崎馬本来の特徴を保持した馬の群れを復元・維持されています。
このことから、御崎馬も完全な野生ではないということですね。
野生の馬がいなくなった理由とは
北アメリカでは、野生の馬の群れができると天敵があまりいなかったことから急速に数を増し、一時その数は200万頭に達しました。
今はそれだけ多くの野生馬たちがいなくなってしまいましたが、その理由はなんでしょう。
一つ目は人間による狩猟です。
捕まえた馬は家畜となり、人間の役に立つように改良されていきました。
家畜となった馬は野生にいるような身の危険を感じなくなり、またエサを求めて広い草原を歩き回る必要がなくなりました。
二つ目の理由は厳しい自然や環境の変化により、次第に追い詰められ絶滅したといわれています。
また、人間に管理されていると馬は病気や怪我をしても治療することができます。
しかし、野生で病気や怪我をすると致命的です。
例えば、人間に飼われている馬は蹄を守るために蹄鉄を付けます。
しかし、野生の場合は蹄を傷つけると思うように歩いたり、走ったりすることができず、肉食動物に捕まり命を落とすことになります。
かつて野生の馬として生息していた!?「ターパン」という動物
ターパンとはヨーロッパ全域とアジアの一部に生息していた野生の馬で、体高は120〜130㎝、体重は約250kgとサラブレッドに比べると一回り小さいです。
身体の色はグレー、前髪・たてがみ・尾・四肢の下半分が黒でモノトーンな印象の馬です。
ヨーロッパ中央から東部にかけて 1800年代初めまで生息していたシンリンターパンと、南ロシアの平原から森林にかけて 1870年代まで生息していたソウゲンターパンがいましたが、環境の変化や人間による狩猟によって1890年代に野生のターパンは絶滅したといわれています。
飼育下の最後のターパンは1909年、ロシアの動物園で死亡しました。
このようにしてターパンは「昔いた野生の馬」になってしまいました。
野生に近い馬「御崎馬」に会える!魅力いっぱいの都井岬
野生の馬が絶滅してしまったなら、「半野生といわれる馬たちには会える?」「どこで会える?」そんな期待のような声も聞こえてきそうですが、日本でも半野生の馬に会うことができます。
それは宮崎県串間市にある都井岬の御崎馬です。
その歴史は300余年。
都井岬は元禄10年(1697年)福島地方(現在の串間市)に設置された藩営牧場の1つです。
現在でも都井岬全体の約500ヘクタールに、1日に40キログラム程度の草を食む馬たちが暮らしています。
都井岬では、半野生といわれるほど人間に管理されていない、我が物顔の馬たちに会うことができます。
馬好きさんにおすすめ!関連する書籍をご紹介
馬が好き・読書が好きならきっと楽しめる、野生の馬に関連する書籍をご紹介します。
野生馬を追う ウマのフィールド・サイエンス
¥3,080 税込
野に伏して馬を待つ――北海道、カナダ、ケニヤ、そしてインドのフィールドへ……
周縁に生きる馬たちに魅せられ世界を彷徨う女性研究者が描く馬と人間をめぐる動物記。
人と共に生きる 日本の馬
¥1,980 税込
日本の在来馬に魅せられた写真家である著者が、馬をたずね全国のゆかりのある地を踏査した渾身のフォト・ルポルタージュ。
JRA賞馬事文化賞受賞。
世界の馬 伝統と文化
¥7,150 税込
さまざまな品種、各国の馬をとりまく伝統と文化を、美しい写真とともに紹介!
緑豊かな草原、荒涼とした大地、極寒の地など、その国の風景とともに馬の魅力を味わうことができます。
まとめ
かつては沢山いた野生の馬ですが、今となっては絶滅してしまいました。
しかし、その子孫を野生化させようという試みもあります。
またムスタングや御崎馬のように半野生といわれる馬たちもいます。
乗馬クラブで日々人間に管理されていると馬との違いもあると思います。
幸い御崎馬は日本の都井岬にいますので、会いに行ってみるとおもしろい発見もありそうです。
このページをシェアする