馬が頭を擦り付けてくるのは愛情表現?
お手入れのとき、下馬したとき…皆さんは馬に頭を擦り付けられたことがありますか。
あのジェスチャーにはどんな馬の真意が含まれているのか、探っていきましょう。
この記事で分かること
・しっかりとした信頼関係を築くために、馬の生態を知ろう
・愛馬に信頼してもらうために気を付けるポイント
・馬の愛情表現の仕草
馬が頭を擦り付けてくる…その真意は?
馬に頭を擦り付けられると愛情表現をされた気がして、嬉しくなりませんか。
ある日、下馬をしたら、筆者の袖に馬がゴシゴシ頭を擦り付けてきました。
甘えているのだと思い、喜んでいたところ、インストラクターから衝撃的な一言が…
「顔がかゆいだけだと思います」
強い力でグッと擦り付けてきたら「かゆいだけ」?
そこでその日の騎乗を思い返してみると、鞍上でリーダーシップを発揮したとは言いがたい内容でした。
しかも、ぼーっとしていたら倒されてしまいそうなほど、強く頭を擦り付けられました。
冷静に考えてみると、確かに愛情表現という感じではなかったように思います。
放牧地にいる馬がお尻を牧柵に擦り付けているのを見たことはありますか。
馬は顔やお尻を自分で掻くことができません。
そのため、何かに擦り付けることによって、かゆみを和らげます。
おそらく、筆者は頭を掻きたかった馬にとって、タイミングよく近くにいた人だったのでしょう。
しっかりとした信頼関係を築くために、馬の生態を知ろう
それでは、馬から愛情表現を得るためには、どうしたらいいのでしょうか。
まず、信頼関係の構築をしなくてはなりません。
さらにリーダーまたは自分より上だと馬に認めてもらう必要もあります。
馬は群れでリーダーに従い生活する動物です。
そのリーダーの体を借りて、かゆみを和らげることはあまり考えられません。
同じように群れで、順位を決めて暮らす動物に犬がいます。
家族の中でも、愛犬からリーダーの扱いを受けている人もいれば、そうでない人もいることは観察をすれば一目瞭然ですね。
同じように人間と馬との間でも、馬のなかで順位付けされています。
どのように馬に接したら信頼関係を築くことができるのでしょうか。
馬の生態を知ることから始めましょう。
上下関係を示すために大きな声で叱るのはNG
馬の体重は、ポニーでも平均200キロ前後、輓馬などの大型馬では軽く1トンを超える個体も。
馬が遊び半分で人間にしたことでも、人間にとっては命の危険になる可能性があります。
人間がリーダーであると馬に示すことができればいいのですが、そういった関係性は一朝一夕で築けません。
まずは、ダメなことをダメと指摘するところから始めましょう。
馬は臆病な動物なので、大きな声で叱るとトラウマになって人間を怖がるようになる可能性があります。
人間に対する恐怖で馬がパニックを起こしてしまったら、手を付けられない状況になります。
大きな声で叱るのは絶対に止めましょう。
叱るときには馬の目を見て、低い声で「いけない」など短い言葉を使います。
興奮せず、落ち着いて、望ましい行為でないことを馬に認識させましょう。
愛馬に信頼してもらうために気を付けるポイント
それでは、愛馬に信頼してもらうためには、具体的にどのような点に注意して接したらいいのでしょうか。
ここからは信頼を得るために気をつけたいポイントをご紹介します。
リーダーシップを持って接する・指示をはっきり明確に伝える
皆さんは、どのようなリーダーであれば信頼できますか?
人間にとっての理想のリーダー像は、実は馬にとっても理想のリーダーかもしれません。
この人についていけば安心だと思われることが、リーダーとして認められるための第一歩です。
まずは、指示や要求をはっきりと示しましょう。
こちらの指示に対して、反抗を示せば叱る必要があります。
逆に、従ってくれたときには褒めてあげましょう。
しかし、その指示や合図は、馬に分かりやすいものでなければなりません。
例えば、歩度を伸ばす指示を出したのに馬が反応しないケースを考えてみましょう。
まず、馬に分かりやすくするため、合図に一貫性を持たせます。
さらに、指示に従ってくれた場合は合図から馬を解放するようにします。
馬に歩度を伸ばしてもらうための指示として、
「ふくらはぎをくっつける→ふくらはぎの圧迫→かかとの軽い圧迫〜強い圧迫→舌鼓→ムチ」
と毎回、同じ順番で合図を強めていくとしましょう。
最初の合図では、ムチを使ったら歩度を伸ばしてくれたとします。
すぐにムチの使用をやめて、馬を合図から解放しましょう。
すると馬は乗り手が歩度を伸ばして欲しかったのだと理解します。
このまま一貫性のある合図と解放を続ければ、ムチより早い段階で反応するようになっていくでしょう。
このように、合図を分かりやすくするためには、一貫性とメリハリが大切です。
初心者の方は、馬が反応しているのに強い合図を続けてしまうことがあります。
これだと馬も乗り手の要求が分からず、反応が鈍くなっていくでしょう。
また、最初から強すぎる合図を送るのも馬に不信感を与えてしまいますので要注意です。
馬は相手がしてくれたことを覚えている。ブラッシングや餌やりもしっかり丁寧に
馬は嫌なこともよく覚えていますが、嬉しかったこともよく覚えています。
騎乗後のお手入れのタイミングがチャンスです。馬が喜ぶことをたくさんしてあげましょう。
例えば、騎乗後は喉が渇いているかもしれません。
お手入れの前にお水をあげてみましょう。
下馬をしたあとに頭を擦り付けようとしてきた馬は、顔や頭を水分を含んだ柔らかいタオルで優しく拭いてあげると喜ぶかもしれません。
ブラッシングや餌やりなど、愛馬の好みを把握して丁寧に続けていけば、自分のことを大切にしてくれる人だと徐々に信頼してくれるようになるでしょう。
馬をよく観察し、変化にすぐ気付いて対応してあげる
信頼関係を構築するためには、愛馬を理解しようとすることが大切です。
最初から相手を100%理解することは、同じ言語を持つ人間同士でも難しいでしょう。
しかし、馬は人の気持ちを読むのが上手な動物なので、理解してあげようとする気持ちは必ず伝わります。
乗り手側も注意をして見ていれば、愛馬の普段の様子や好きなことや嫌いなことにどんどん気付いていきます。
馬が普段と違ったり、嫌だと言ったりしていることに、すぐに気付いて対応しましょう。
1頭ずつ性格も違うので、好きなことや嫌いなことも全く違います。
分からないことがあれば、乗馬クラブのインストラクターにアドバイスをもらいましょう。
また最近では、馬の行動学やボディーランゲージを取り入れた調教法「ナチュラルホースマンシップ」を書籍や講習会で学ぶこともできます。
この調教法では、馬に人間をリーダーとして認めてもらう関係性を重視しています。
愛馬との関係性構築について、参考になるかもしれません。
とってもかわいい!馬の愛情表現の仕草をご紹介
ここまで「馬が頭を擦り付けてくる行為はかゆいから」という前提でお話をしてきました。
ところが、実は全てがそうではありません。
馬が頭や顔を人間に優しくくっつけてきた場合は愛情表現だと考えられます。
体や手を軽く唇で触ってきたり、挟んできたりするのも構ってほしいサインで、これも愛情表現の一種です。
思いっきり甘えさせてあげましょう。
低い音でブルルと鼻を鳴らしたり、前肢を床に打ち付けて「前掻き」したりするのは、何かをねだっているサインです。
もしかしたら、あなたに甘えたいのかもしれません。
ただし、前掻きは馬の命を脅かす「疝痛」のシグナルでもありますので、注意深い観察が必要です。
また、馬がもぐもぐしている仕草を見せることがあります。
これは「チューニング」と言って、馬が思考を巡らせているときの仕草です。
あなたからの指示に、もぐもぐしてから従ってくれたのなら、馬が自分で考えた結果、この人の言うことを聞くと決めたということになります。
しっかり褒めてあげましょう。
まとめ
同じ頭を擦り付けてくる仕草であっても、そのときの状況や擦り付けてくる強さ、馬との信頼関係の有無などによって、意味に違いがあることが分かりました。
馬は感情表現が豊かな動物です。
愛馬が体で表現している気持ちをくみ取り、信頼関係を構築して、もっと仲良くなりましょう。
このページをシェアする