乗馬の拍車の使い方
拍車(はくしゃ)とは、馬を動かす時に使う金属製の道具で、ブーツにつけて用いるものです。
この記事では、乗馬の拍車の使い方や知っておきたいポイントを重点的に解説していきます。
この記事で分かること
・拍車を使う目的やメリットが分かる
・拍車の使い方が分かる
拍車を使う目的とは
拍車は多くが金属でできていて、先端部分で馬のおなか(人間の脚の位置あたり)を刺激することで、馬に推進をかける扶助をする道具です。
脚だけでは反応が少し鈍いときに拍車を効果的に使っていきます。
うまくポイントに入ると、馬がスッと前に出てくれたり、馬から機敏なリアクションがあったりするでしょう。
初心者が拍車を使うメリットとデメリット
拍車は、一般的には中級者以上向けの道具として知られています。
初心者から中級者へのステップとして、拍車を使用するメリットとデメリットを解説します。
メリット
拍車を使うと少ない脚力で馬への指示ができるため、馬を動かすのが楽になります。
拍車を付ける際にはより脚の位置に注意が必要になるため、正しい姿勢への意識や見直しにも繋がります。
また、ふくらはぎや拍車での脚扶助を使い分けられると指示の強弱を付けることができ、馬が集中しやすくなります。
デメリット
拍車の使い方がうまくいかないと、馬が膠着したり反抗したり跳ねたりして、怖い思いをする可能性があります。
また、むやみに拍車を当て続けると、拍車傷(はくしゃきず)ができてしまったり、拍車そのものに対して馬が鈍感になってしまうことも。
馬にメリハリをつけるため、拍車が必要のないときはむやみに使わないようにしましょう。
拍車を使った方がいい馬と必要ない馬の違いとは?
拍車の使い方は馬の性格や調教の度合いによっても変わってきます。
- <拍車を使った方がいい馬>
- ・正しい合図をしても反応が鈍い
- ・馬場馬術などでより技術的な動きを馬に要求する場合
- <拍車が必要ない馬>
- ・反応が良く、合図に緊張する
- ・脚扶助に対して強い反抗がある
上記はあくまで一般的な目安ですので、実際にはしっかりインストラクターの方の指示を聞いて使うことが重要です。
脚扶助について
馬に人間の指示を与える方法のことを【扶助(ふじょ)】と呼び、一番メインで使うのが【脚扶助】です。
脚扶助と一言で言っても、
① ふくらはぎを緊張させる
② ふくらはぎで軽く圧迫
③ ふくらはぎでぎゅーっと圧迫
④ 踵で軽打
⑤ 踵でぎゅーっと圧迫
等、さまざまな使い方があります。
④や⑤は強い力が必要で、長時間行っていると騎手の姿勢の乱れにつながる場合も。
すると馬も混乱し、余計に重くなり膠着(*)してしまう場合があります。
拍車はこのように、馬が脚扶助に対して鈍感になり騎手の意思に従わない時に
瞬間的に強い脚扶助で馬に反応させるために使用します。
* 膠着(こうちゃく)
馬が動かなくなって人間の指示に従わなくなること
拍車ベルトの通し方
初心者には意外と分かりづらく、ジョッパーズでも質問が多い「拍車ベルトの通し方」を画像付きでご紹介します。
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1. 拍車の向きを確認
拍車の向きを確認します。突起部分が少しカーブになって、下向きになるように置いてください。
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2. 左側の上の穴に内側からベルトを通す
拍車を上から見たとき左側の上の穴に内側からベルトを通します。
このとき、ベルトの金具まで3、4cmほど残したところまでひっぱります。 -
3. 外側から下の穴に通す
次は外側から、下の穴に通します。
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4. 反対側の下の穴に内側からベルトを通す
次は反対側(右側)の下の穴に内側からベルトを通します。このとき、下のベルトがU時にたるむように残します。
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5. 上の穴に通す
最後に外側から上の穴に通し完了です。
右の拍車にベルトを通す手順は、1〜5を左右逆に進めていってください。 -
装着の際のポイント
・拍車ベルトの余りの部分がブーツの外側にくるように装着してください。
ショートブーツとチャップスを使用されている方はチャップスをつけた上に拍車を装着してください。・拍車の装着の高さの調節は4のU時に残す部分の長さによって変えられます。
高い位置に合わせたい場合:U時に残す部分を長く残します。
低い位置に合わせたい場合:U時に残す部分を短く残します。
拍車ベルトの通し方を動画で詳しく解説
<拍車の付け方と拍車の種類を紹介!>
拍車は馬への虐待?
たまに、「拍車をつけて乗るなんて馬がかわいそう」とおっしゃる方がいらっしゃいます。
確かに拍車は馬のおなかを刺激する道具ですが、正しく使えば馬を傷つけることなく楽に動かすことができるようになります。
人が軽い扶助で動かせるということは、馬にとっても負担軽減になります。
しかし、拍車は強い効果があるという反面、強い作用があることを忘れてはなりません。
拍車ばかりに頼っていると、どんどん馬が鈍くなり、最終的にはとても乗り心地の悪い馬になってしまいます。
O脚気味の方など、無意識に拍車を当ててしまう場合は、ブーツの踵の拍車留めの下に拍車をつけると当たりすぎ防止に繋がります。
競技の注意点
あまりにも拍車に頼り過ぎて馬のお腹が傷ついていたり、おなかに血痕が残っていたりすると
馬に対する虐待行為として失格になる恐れがあります。
愛馬精神にのっとり、馬を労わりながら騎乗しましょう。
また、拍車着用の義務がある競技(馬場競技等)に出場したいが馬が敏感だという場合には、突起部がないタイプなど特殊な拍車を使うこともできます。
愛馬や自分のテクニック、競技内容に合った拍車を選ぶようにしましょう。
乗馬の拍車を使う時に注意するポイント
乗馬の拍車を使う時に注意するポイント
・拍車の向きや高さは適切か
・拍車を使った時、馬がどのような反応をしたか
・馬のお腹(拍車が当たる場所)に傷や赤みがないか