人類の歴史は馬と切り離せない。生産手段や交通手段となり、権力の象徴や軍事力にもなり、また友でもあった。本書はさまざまな角度から現地での取材を織り交ぜ、太古から現代にいたる馬と人間との深い関わりを紹介する。

歴史が馬の立場から語られることはほとんどない―――たいていは人の立場から語られる。馬は人と人の行為を受けいれ、人に協力してきた。それが馬の神経内分泌系の働きや食べ物への欲求、恐怖、行動操作、遺伝子操作によるものだとしても、馬の協力のおかげで人は広大な土地を支配し、衣食を満たし、損害を埋めることができた。好むと好まざるとにかかわらず、馬は動物の中で特別扱いされ、仲間だと見なされてきた。しかし、ひどく酷使されもした。同じ哺乳動物である人に選ばれたため、大きな犠牲を払い、多くのものを失った。人は馬を絶滅から救ったが、数えきれないほどの馬を殺してきた。
これから語る六つの話は、人が何千年にもわたって語ってきた馬の話のうちの一握りである。フランスの博物学者コント・ド・ビュフォンはどこか逆説的に、馬を「人類の最も崇高な獲得物」と呼んでいる。 ――――本書「はじめに」より


目次
進化―タマネギはユリに変わりうる
家畜化―歯、墓、雌馬の乳
野生―俊足の荒ぶる馬
文化―不思議なくらい賢い馬
力―バイオ燃料を生む干し草
肉―アメリカ人は馬を食べない
富―騎士になる夢と天馬
戦―馬は戦士か？


・著者　スザンナ・フォーレスト
・訳者　松尾　恭子
・サイズ　A5判
・ページ数　418ページ
・出版社　原書房