基本の扶助⑪ 運動の質 編【~馬にたずさわる人全てが調教者~37】
まずはリラックスした大きな動きの運動を、大きな図形で、馬の身体をほぐす事を目的に行います。
ここでは馬のレベルやその日の状態、騎乗者のレベルや訓練内容により時間的な違いはありますが、
1.騎手は馬の動きを邪魔しないようにバランスをとって馬についてゆき、
2.馬の口が同じ位置で安定したハミ受けを保つために、拳の位置ができるだけ変わらない様にしながら、
3.ひじがゴムの様に微妙に動き馬の口と常に同じ強さで繋がっている事に集中して
運動する必要があります。
ここまでの運動であれば、障害飛越競技で言えば中障害の下のクラス、馬場馬術で言えばMクラス程度までなら充分対応できるだけのレベルに相当します。
しかし、馬術においては騎乗者がここまでの事を完璧にしたとしても馬が未調教の新馬であったなら3種の歩法すらちゃんとできません。
逆に調教の進んだレベルの高い馬だと、騎乗者が「こんなもんかな・・・」という適当な扶助をしたとしても馬の方が忖度して大体は運動してくれるのです。
しかし、このような状況での運動は馬にとっては 「これでいいのかなー、怒られないかなー」と精神的には不安に、肉体的には苦しい状態で、それらしい形を取るのが精一杯ではないでしょうか。
こんな状態での運動では決して良いパフォーマンスができるはずありません。
ですから騎乗者は正しい扶助の知識を持って、それをしっかり動作出来るようにすることで既に扶助を知っている馬は堂々と自信を持って、新馬は無理なく速やかに要求されている事を表現する事が出来るようになるのです。
扶助は馬が要求されている運動を表現するために最も無理のない楽な姿勢を取らせる為の騎乗者の動作です。
正しい扶助での運動を毎日のなかで繰り返し行うことで馬自身の柔軟性と筋肉トレーニングを無理なく行っていることとなり、益々良いパフォーマンスができることとなるのです。
令和元年9月
長谷川 雄二
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