馬場馬術の魅力のひとつ。憧れの燕尾服について詳しく解説

馬場馬術の公式の大会で着用が定められている燕尾服。
一般には男性の正装とされていますが、馬場馬術の大会では女性選手も燕尾服を着用して競技に花を添えます。
しかし、なぜ馬場馬術で燕尾服が着用されるようになったのでしょうか。
今回は乗馬愛好家の憧れである燕尾服について、深掘りしていきます。
この記事で分かること
・燕尾服の歴史
・乗馬で燕尾服を着る場面
・燕尾服の着こなしのポイント
・馬場馬術競技の服装規定
燕尾服(ドレッサージュコート)とは?

燕尾服は、最も格式の高い正装とされています。
現在でも、ごく限られた場面にはなりますが、着用が求められることがあります。
今回はそんな燕尾服の誕生や歴史、またドレサージュコートとして馬場馬術で着用されるようになったいきさつなどをご紹介します。
燕尾服の歴史

後ろが長く、ツバメの尾のように見えることからスワローテールコートとも呼ばれる燕尾服の原型は、18世紀前半に生まれたと言われています。
17世紀後半から18世紀初めごろにかけて、フランスではイギリスの乗馬服が流行していました。
そのうちのひとつが、長いコートの前裾をもたつかないようにカットした「フロック」と呼ばれていたもので、燕尾服の原型だとされています。
ちなみに当時はこの乗馬服に限らず、さまざまな服のことを「フロック」と呼んでいました。
現代で「フロックコート」と呼ばれているのはドイツの軍服を起源とした裾が膝まである上着のことで、乗馬服のフロックとは別ものです。
乗馬服のフロックは、男性ファッションの最前線であったフランスから流行し、世界に広まり、イギリスでも普段着として定着していきます。
イギリスが産業革命の時代に入ったころ、紳士服に使われる色として黒が大流行しました。
工場でススがかかっても汚れが目立たないからだったと言われています。
もちろん、流行のカラーを使った黒のフロックも誕生しました。
19世紀中ごろまで、夜の正装にはさまざまな色のフロックが着用されていましたが、黒の流行を経て、黒いフロック、つまり燕尾服が正装とされるようになりました。
燕尾服には白いシャツに白い襟付きベスト、白の蝶ネクタイ、黒のエナメル靴を合わせ、白い手袋を手に持つ装いが正式とされています。
招待状のドレスコードに「ホワイトタイ」と書いてあれば「燕尾服」の着用が必要であることを示しています。
ちなみに準正装である「タキシード」には黒いタイを合わせるため、ドレスコードが「ブラックタイ」であれば「タキシード」を着用しなくてはならないことを意味します。
具体的には宮中や王室で夕方ごろに行われる式典、ノーベル賞授賞式、国主催の式典に出席する際に燕尾服を着用します。
このように燕尾服はかなり格式の高い正装であり、日本で一般の方が着用する機会は自分の結婚式など、かなり限定されています。
乗馬で燕尾服を着る場面とは

フロックは、乗馬服として流行したところからファッションとして受け入れられていきました。
そのため、フロックや燕尾服を着用して乗馬をすることは当時、特別なことではなく、ごく一般的なことでした。
しかし、乗馬をした後に座って過ごす際に後ろの裾が邪魔になり、徐々に後ろの丈も短くなっていったと言われています。
さらに20世紀に入るとリラックスできる服が流行したことに加えて、乗馬自体が一般庶民に普及していったため、乗馬服も例外にもれず、カジュアル化が進み、今に至るものと考えられます。
しかし、格式を重んじる馬場馬術大会では、馬術が貴族のスポーツであったころの伝統を受け継いで、現在でも燕尾服またはジャケットの着用が求められます。
特に国際大会では一定のレベルに達した馬術選手のみが着用できる憧れの乗馬服です。
一般的な競技用ジャケットとの違い

障害馬術では、燕尾服ではなく、競技用ジャケットの着用が求められます。
障害馬術では、随伴で馬をコントロールすることが求められるため、燕尾服のように後ろの裾が長すぎると競技にも支障をきたす可能性があるためです。
ジャケットの色や着用するシャツやタイなど細かい規定が大会ごとに定められているので、どの大会でも着用できる黒などのベーシックな色を購入することをおすすめします。
馬場馬術でもジャケットでの参加が可能な場合があります。
障害でも馬場でも大会に参加する予定のある方はどちらの要件も満たすものを購入するのがよいでしょう。
大会の規定を確認したうえで、競技会に参加したことのある先輩やお店の方にアドバイスを聞いてみるのもいいかもしれません。
燕尾服の着こなしのポイント

燕尾服は、自分の体に自然にフィットするものを選びましょう。
合うサイズのものがなければ、カスタマイズをしてくれるメーカーもあります。
自分の体に合わない大きなものを着用すれば、だらしなく見えますし、小さいものであれば、動きづらくなってしまいます。
女性であれば、華やかさを演出してくれるデザインもおすすめ。
襟や袖口に刺しゅうなどでデリケートなデザインが施され、上品さを上乗せしてくれるデザインもたくさんあります。
また下に着用するシャツやタイとのバランスも大切。
燕尾服のデザインがベーシックなものであれば、タイを華やかな印象のものにしても素敵です。
馬場馬術競技の服装規定
日本馬術連盟主催や公認の競技大会では、単色の燕尾服またはジャケットであれば着用が認められます。
以前は黒か濃紺の燕尾服またはジャケットとされていましたが、国際馬術連盟の規定に合わせて、数年前にルールが変更となっています。
燕尾服の飾りは品位を損なわないものであり、過度に華美でなければ問題ありません。
さらにベースが黒または暗色のヘルメットの着用は必須です。
キュロットやタイは白かオフホワイト、長靴は黒か暗色を着用します。
グローブは白、オフホワイトまたは燕尾服・ジャケットと同色のものであればOKです。
馬場馬術の競技会は服装規定が厳しいため、事前に大会の規定を確認することが大切です。
馬場馬術競技では馬もおめかし!

馬場馬術は馬と人間の動きの美しさや優美さを競うため、馬たちもおめかしして登場します。
特に注目されるのは馬たちのヘアー。たてがみは、きれいに編み込まれています。
たてがみを編むのは「馬の正装」とも言われており、見た目の美しさはもちろん、屈撓(くっとう)した首のシルエットや筋肉をジャッジにみてもらうためでもあるんです。
尻尾も専用のスプレーでツヤを出し、さらさらに仕上げます。
そのほかにも、臀部の毛を模様状に逆立てるおしゃれを披露する馬もいます。
馬体や蹄など、隅から隅までピカピカに磨かれた馬は、選手に負けないほどに華やかな雰囲気をまとっています。
馬のおしゃれにも是非、ご注目ください。
まとめ

今回は馬場馬術の競技会で着用される燕尾服について深掘りしました。
格式の高い燕尾服がイギリスの産業革命時代に「汚れが目立たない」という理由で誕生してから、乗馬服として大流行し、数世紀を経た現代でも、馬場馬術競技会での着用が定着しました。
国際大会では燕尾服の着用ができる乗り手のレベルなどにも細かい規定があり、着こなしにも格式の高い正装であることを意識する必要があります。
だからこそ、あの品格と優美さを兼ね備えた美しい演技を観ることができるのですね。
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