馬体のシナリを造る為にⅡ【~馬にたずさわる人全てが調教者~18】
馬体のシナリを造る為に前回の騎手の姿勢を使って、まずハミを馬が受けた状態をつくる事が必要です。
しかし、ただ騎手がその姿勢をとって推進し、ハミに出てきてそれを受け止めさえすればハミ受けが完成すると言う訳にはいきません。
ただ待っていてもハミを突っ張ってなかなか力を抜いてくれないでしょう。
この時、強く姿勢を保って拳を馬に引っ張られないようにしながら、更に強い脚の圧迫をして馬が力を抜いて顎を譲ってくるのを待ちます。
この作業は、サイドレーンを多少強く使用した調馬索運動を経験して先行体験している馬でさえ、
押えておくのも強い脚の圧迫もかなりの力を必要としますので力の弱い人はハミ受けを完成させる事ができないことになってしまいます。
そこでちょっと遠回りになるかもしれませんが強い力を使わなくてもできる方法があります。
ただし、力を使わない分、騎手の正確な姿勢と動作が要求されます。
●まず、真っ直ぐの姿勢を取ります。坐骨は鞍に左右均等にまたがり両脚も左右同じ位置 でしっかり鐙を踏み下げ真っ直ぐに推進します。
締跡を四角く偶角は滑らかに直線は真っ直ぐに歩く事ができたらOKです。
●次に馬の口を捉えた状態をつくります。長めの手綱でかまいません。
上半身は馬に引っ張られてもその力をお尻に返す構え(力の循環の構え(※))を取ります。
両肘を常に後に引きゴムの様にして手綱が常に軽く張った状態を維持します。
ハミを馬が自ら軽く噛む様にして受けるまでのコントロールは開き手綱を使いながらどんどん歩かせます。
この時馬が上を向こうが下を向こうが右を向こうが左を向こうが力の循環の構えをけして崩さないで、拳の位置も変えないでいられるよう力まずに頑張って下さい。
この状態で馬が歩きさえすれば良しとして誉める事の出来るわずかな時間です。
※力の循環の構えとは、馬を推進して後肢が踏み込んだ力が馬体を前に押し出しハミに出ます。
ハミに出た力を騎手が腰と一体にした肘で受け止めて、その力を坐骨、鞍、馬の背に返します。背中に返した力は再び推進となって循環します。
●歩く事ができたら、同じ締跡を歩きながら頭だけを内方に向けます。
この時、外方の手綱は馬の口をしっかり捉えて同じ位置で強目に握り肘を伸ばされないように維持します。
内方の手綱は軽い握りで構えのラインを崩さない様に肘を後に引く様にして内方に向けます。
馬が硬くなって柔らかく向けることができなかったら、硬い針金をホグスようにゆっくり何回も使う戻すを繰返します。
また、手の動きに反応して締跡から外れて動く様でしたら内側に入って来るなら内方の脚で外に押し戻します。
外側に肩を張って来るようなら外方の肘と拳を強く保持しながら外方の脚を強く使用して壁をつくります。
以上の要領で反対の外方にも向けます。この動作を繰返しているうちに外方のハミをしっかりくわえながら内方の顎を内に向け力を抜いてハミを柔らかくとって来たらハミ受けの完成です。
思いきり誉めて誉めて誉めまくりましょう。調教で最も大事なことは誉めることです!
平成29年9月
長谷川 雄二
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