基本の動作 ⑧【~馬にたずさわる人全てが調教者~34】
推進された馬が自らハミに出るように動き出した状態を騎乗者は腰と一体となった肘でその力を受け止め、
お尻が鞍の方へ引かれる構えが安定するように背筋を使って静止した状態のまま、脚を使って更に後肢を踏み込ませる様に使用することで前後のシナリ状態に入って行きます。
この様に文書にすると簡単そうに感じますが実際はそう簡単にはなってくれません。
肘から前の前腕や拳に力を入れて動かしてしまうと馬はその力に抵抗して逆に前方向に首を伸ばし、脚を使った分速くなり前のめりの姿勢になってしまいます。
また、力の強い騎乗者が拳を固定したり、口を左右に振り回すことで速くなることをしなくなったとしても、
頸椎や顎を折り、いわゆるもぐったり巻き込んだりした状態となり、手綱でのコントロールをすることが困難な状態となってしまいます。
更にこの状態で脚を使うと馬は急いで前に行こうと速い動きとなるだけで後肢が踏み込んで来ることはありません。
つまり、前輪駆動の動きとなってしまいます。
以前にお話ししたように、前肢は馬体本体と骨で繋がっていない為あくまでも本体にかかる衝撃を軽減して体を支える為の振り子運動をしているものです。
ですから馬体を躍動させるためには腰骨で馬体本体と骨でしっかり繋がっている後肢が踏ん張って踏み込んで馬体を躍動させる後輪駆動でなければならないのです。
この前後のシナリの過程で、馬が首を折りたたんでもぐった状態になってしまうことはインターナショナルの高いレベルの競技会においても多く見られます。
つまり、わずかな力の加減や動作でこうなってしまう事を知識として持っていて下さい。
その上で日頃の練習でどうしたら良いシナリを造って運動出来るのかを考えながら実践してみて下さい。
令和元年6月
長谷川 雄二
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