ニ蹄跡運動からの展開【~馬にたずさわる人全てが調教者~47】
馬運動の手順として、騎乗してからリラックスした状態で充分常歩をしたら手綱を取り軽めのコンタクトで運動を始めます。
・すでにピリッとして軽快な動きの馬や興奮気味の馬は、軽速歩をしながらソフトな拳でゆったりと落ち着いたリズムの良い速歩になるように心掛けながら運動を続けます。
その後も、元気の良い状態であれば、あまり強く拘束しないように出来るだけゆったり、ゆっくりの駈歩を大きめの輪乗りで行い、落ち着いているようなら馬場を大きく廻ります。
途中で速くなろうとしたり、ピリピリするようなら大きい巻き乗りを何回もして下さい。
・落ち着いて来たら、又は始めから脚に反応の鈍い重い馬などは、リラックスした常歩によるニ蹄跡運動により脚に対する反応を強化すると同時に後肢の踏み込み、馬体の柔軟、扶助の確認を目的に行います。
鈍いからと突然、鞭で叩いたり、脚で蹴ったり、馬を脅かすような行為は馬にとっては訳のわからない懲戒をされている事となるのです。
一時的には興奮してピリッとし前進気勢が発動したかのようになりますが、この様な行為での運動はコミュニケーションを伴う扶助による運動と違い、馬にとっては自信を持って動くどころか不安と恐怖心でいっぱいになります。このような運動が続けられるとやがて反発心が芽生えて来てしまい、今まで理解していたはずの扶助も受け入れられなくなってしまうのです。
★この部分は、乗馬をする上で最も重要な考え方の一つです。
扶助は騎手が小さな動作を発動するだけで馬はその一つ一つの動作に対応して馬自らの身体を動かすことで騎手が何を要求しているかを知り、自然と要求されている行動が出来るのです。
馬が人の動作を受け入れて素直に動作する事で、騎手の指示は最小の力と動きで済むのです。
馬も堂々と自信を持って気持ちよく、そして騎手も力む事なく明確で正確な扶助の発信に心がける事で人馬共の信頼関係が生まれます。
この様な運動は見ている人にも感動を与える事が出来るものと信じたいです。
具体的な運動は次回お話ししたいと思います。
令和2年8月
長谷川 雄二
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