馬術入門(9)【~馬にたずさわる人全てが調教者~67】
前回のシナリを作る為の図形運動を正確に描いて、その足跡を3種の歩法(常歩、速歩、駈歩)で正確になぞる事が出来るようになるためには、推進した後躯の動きが馬体の幹を通り真っ直ぐハミに出て馬の身体に芯ができていなければなりません。
脚と坐骨、つまり全ての騎座を駆使して後肢の動きを活発にさせることで容易にシナリを作る事が出来る後躯をコントロールすることが最も重要です。
伸縮のための前後のシナリ、
1.十字を描いた中央線上を真っ直ぐ歩く事、両ハミを左右均等に保ち、そこへ馬 体が真っ直ぐであるように中央線に乗った時点から騎手はバランスを崩すことなく真っ直ぐに乗り、左右均等に進行方向へ推進が効いていなければなりません。
2.真っ直ぐ線上を歩く事が出来るようでしたら、中央ポイントで停止、5歩以上の後退を行います。
まず停止は、上半身を垂直に意識して肘と腰を一体にし肘を直角に折るように構えます。
拳は手綱が伸びて長くならない、逆にたるんでブラブラにならないように肘をゴムのように使えるようにイメージして保持します。
拳の位置を同じに保ち馬が口に出て拳を前に引いた際に腰と肘で受け止めその力を坐骨に返し騎手の座りが更に深くなるような構えで力を受け止めて下さい。
この際特に多く見られる良くない騎手の動きとして、拳を強く握る、拳を手前に引く、拳を上に引き上げる、肩を後ろへ反らす、肘を伸ばす、手首を折る、等の動きは馬の反抗を誘ってしまうこととなってしまいます。
あくまで上半身は、馬の前に壁を作る動作で手で馬を止めるものではありません。
停止の為の動作の主役は下半身の動きです。
その下半身の動作で最も重要な事は、股関節、膝関節、が力みなく自身の意思で動かすことが出来るかです。
停止においては、両股関節ごと両膝を同時に脹ら脛を馬体に着けたまま膝を踏み下げながらやや後方へ下げます。ブランコを後ろへ漕ぐ時のイメージです。
上記の動作は後退の扶助と全く同じです。
この姿勢のままはっきりと左右交互に踵を強く馬体に当て後ろへの動きを促します。
この時も上半身は、壁をしっかり作るだけで拳を引いて後ろへ下げようとしないようにして下さい。
4歩までは力で無理矢理でも後退させられますが、5歩以上は馬に無理強いをしていることとなり体を痛めてしまう事となります。
十分注意して無理をしないようにして下さい。
初めから正確に綺麗な図形を描くことが出来なくても構いません。
少なくとも馬体の柔軟性は増しています。
騎手が正しく正確にタイミング良く指示、扶助を発信することが出来るようになるにしたがって馬自身も柔軟に、楽に、馬体のシナリを自然に造る事が出来るようになるための筋力であったり身のこなし方を覚えていくようになります。
毎日の運動の地道な継続が大切です。
諦めずに自身の乗り方を振り返りながら続けて下さい。
令和4年4月
長谷川 雄二
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