馬術入門(21)【~馬にたずさわる人全てが調教者~79】
前回までの馬装に関しても、普段の馬との生活のなかにおいても、騎乗している時も、しつけの時、調教の時、馬と関わる全ての時において、こうしなければならないと言うことではありません。
ベースとなる考え方は常に ”なぜ” と言う理論的説明のつく論理の元、確固たるものでなければなりませんが、実馬と向き合っている瞬間的時々の対応では馬の物理的、肉体的、精神的都合が存在し、人間の都合と噛み合わず、たとえ理論的に馬に無理なく正しいであろう事をしても全く反応すらしてくれないことが多々あります。
そこで、馬に人間の思い通りスムーズに動いてもらう為には、馬 があなたを注目することから始まります。注目してもらう為には、まずは平素からあなたは馬にとって心地のよい存在でなければなりません。
・馬房の掃除をする時、人の意思で馬を動かす事を最小限にしてサッと掃除を済ませる。
馬房はその馬にとって唯一のくつろげる我が家です。
ズケズケと踏み込まないで “お邪魔します” の気持ちで。
・馬手入れをする時、痒い所、痛い所に気が付いて対応してくれる。
馬が気持ち良くしているからと言ってひつこく掻いてやる必要はありません。
傷の治療でその時痛い思いをさせても問題ありません。
馬はあなたが気付いて対応してくれたことであなたは良い存在となります。
・乗っている時、馬がどの様な状態にあるのか
①精神的にパニックになって乗り手の指示していることを冷静に受け止める事が出来ないのか?その原因は周りの環境とか雰囲気なのか、乗り手の動作や気持ちによるものなのか?
②乗り手の指示している扶助が何を要求しているか解らずにいるのか?
③馬は何をしなければならないのか解っているが肉体的に身体が硬かったり、筋力が伴わなかったり、その動作をするための体勢ができていないのか?
等を適切に判断して対応できる、馬が怖いと思っていることに気付いてくれる。そんな乗り手であれば、あなたは、馬に常に注目される存在となります。
人参や砂糖が最高のアイテムです。
馬に注目されてからのあなたの声、動作、目線、気持ち、深層心理までも観察されます。
馬が動作してあなたと目線を合わせて来たらできる限りの反応してあげて下さい。
それが馬との対話の始まりです。つまりは調教の始まりを示唆するものです。
令和5年4月
長谷川 雄二
このページをシェアする