視野が広い馬の目。どこまで見える?視力・色覚・距離感は?
馬は大きくて優しい目をしています。
その目に吸い込まれそうになること、癒されることもあると思います。
そんな馬の目、どんな見え方をしているのでしょうか。
視野・視力・色覚・夜の見え方、人間と大きな差はあるのでしょうか。
一つずつみてみましょう。
この記事で分かること
・馬の視力
・馬の色覚
・距離感はわかるのか
・暗視能力
超広角視野の持ち主!馬の視野は350度
馬の目の特徴として、「位置」があります。
人間や犬や猫など他の動物と比べてみると馬は両目の間が離れています。
これには理由があります。
野生だったころ、広い草原の中で生活する草食動物の馬は、いつ肉食動物に襲われるかわかりませんでした。
そのため、目がほぼ横にあることで広い視野を持ち、異変に早く気付いて逃げることが出来るのです。
その視野の広さは350度といわれています。
ちなみに私たち人間の視野はどれくらいか想像できますか。
道路を渡るときにも、首を動かし左右を確認していますよね。
人間の視野は200度といわれています。
比べてみると馬の視野の広さに驚かされます。
見えるのはどの角度まで?馬の真後ろに立つと危険な理由
前述の通り、馬の視野の広さは350°。
真後ろ以外、ほとんどみえていることになります。
ここでお気づきの人もいると思いますが、馬と触れ合うときの注意として「馬の後ろに立たない!」と指導されたことがある方も多いですよね。
これは馬の視野の広さからくる注意なのです。
つまり馬は臆病な動物なので、視野から外れる場所に人が立つと、驚いたり恐怖を感じたりしてしまいます。
そして、蹴るなどして攻撃をしてくるということなのです。
馬が不意に動いて怪我をしないようにということもありますが、馬を驚かせたり、怖がらせないようにするためにも、馬の後ろは立たない、通らないようにしましょう。
意外と弱い?馬の視力は0.6程度
広い草原で生活する馬は、遠くの異変にもすぐに察知できるように、さぞかし視力も良いのではないか、と想像してしまうかもしれません。
ところが馬の視力は個体差は別として、おそらく0.6〜0.8ぐらいと弱いようです。
人間では運転や他の作業によっては眼鏡が必要なレベルです。
それほど遠くが正確にみえなくても、肉食動物から身を守ることができるのは、次に説明する動体視力のおかげかもしれませんよ。
馬の動体視力は素晴らしい!
広い視野を持つが正確に距離を感じ取れない馬の目ですが、人間が気づかない場所で細かく動くものを察知できてしまうほど、動体視力が優れています。
そのため遠方でも動く物体を捉えると危険を察知し、すぐに逃げることができます。
馬が急な動きにビックリしたりするのは、動くものを捉える動体視力が優れているからかもしれませんね。
馬にはオレンジ色が緑色に見える?馬の色覚について
人間が乗馬を継続する目標としてホーストレッキングがあると思います。
林の中で感じる緑、きれいな海と砂浜。
人間が綺麗と感じる風景を、馬も同じように見て同じように感じているのでしょうか。
残念ながら、馬には同じようには見えていません。
なぜなら人間と馬は色覚が違うため、同じ景色でも同じ色には見えていないのです。
では、どんな見え方をしているのでしょうか。
色を認識するのには錐体細胞(すいたいさいぼう)が関わっています。
これが人間の場合は3種類あり3原色、馬の場合は2種類あり2原色といわれています。
ちなみに紫外線さえ見える昆虫は錐体細胞が4種類あり4原色といわれています。
きっと昆虫たちは私たち人間が見ているより、もっと色鮮やかな世界を見ているのでしょうね。
赤の識別は難しい馬。色はどんなふうに見えている?
人間の3原色と馬の2原色、具体的にはどんな違いがあり、どんな見え方をしているのかをみてみましょう。
人間は赤・青・黄色の世界で生活していますが、馬は赤の識別が難しいことが実験の結果からわかっており、黄色から青の世界で生活しているようです。
障害物をさまざまな色に変えて行った実験によると、オレンジ色は緑色に見えているのだろうという結果がでているようです。
これは競馬の障害レースの安全性向上に役立つことを期待し行われた実験です。
障害の色を変えたことでジャンプの仕方の変化が見られたという結果がでています。
私たち人間には問題なく識別できる色も、色の見え方が違う馬にとっては障害物が地面と同化して識別しにくいなど危険に繋がることがあります。
また、馬の大好物といわれる人参やリンゴ。
オレンジ色の人参は緑色に、赤いリンゴはグレーなどに見えているのかと思うと、不思議な感じがしませんか。
私たちの顔や乗馬ウェアは、いったいどのように見えているのでしょうね。
両目で物体を捉えられる範囲が狭い馬。距離感は分かるの?
草食動物である馬と、肉食動物の目の機能の違いには視野の広さの他に距離感の正確さもあります。
人間を含め、肉食動物なども両目で対象物を見ることで立体的に捉え、距離を測ることもできるのです。
具体的に説明すると馬は単眼視(たんがんし)といって左右それぞれの目で別のものを見ることができます。
その範囲は視野350度のうち285度です。
そのため草を食べているときでもシッカリと周囲を警戒することができるのです。
しかし、両方の目で物体を捉える範囲が65度と狭くなっています。
そのため距離感を正しく捉えることができません。
一方、虎やライオンなど肉食動物は顔の正面に目があり、120度の視野を両目で見ることができます。
つまり肉食動物の方が両眼で見る範囲が広く、より正確に距離を捉えることができるのです。
暗くてもよく見える!馬の暗視能力
馬は夜行性ではなく昼行性なので、基本的に夜は休みます。
でも野生だったころの名残でショートスリーパーであったり、暗い夜でも物を見る能力があります。
野生では夜でも肉食動物に襲われることはありますからね。
では夜も見える目とはどんな目をしているのでしょうか。
猫を飼っている方はわかるかと思いますが、夜になると目が光ります。
馬の目も同じ仕組みなのです。
まず光が瞳孔から入ると網膜に像を結び、網膜表面の視細胞を刺激します。
視細胞が光の刺激を受けると、その刺激を電気信号に変えて視神経を通じて脳に送ります。
しかし、夜などは光が弱いので視細胞が受ける刺激は小さくなり見えにくくなります。
ところが、馬の目の網膜の後ろ側にはタペタム(輝板)というものが存在します。
タペタムには網膜で吸収されずに透過した光を反射する役割があり、反射された光はもう一度視細胞を刺激します。
つまり、タペタムがあることで光の刺激を2回受けることでき、暗い夜でも物が見えるのです。
豆知識・一般的な意味とは違う 馬の『夜目』
「夜目(よめ)」ってご存知ですか?「目」がついているから、目に関係する?と思われる方もいるのではないでしょうか。
これは馬の前肢の腕節、後肢の飛節の内側にあるグレーっぽい角質のことです。
「肢に目?」と思いますよね。この名前の由来は面白いので紹介しますね。
正式な学名としては附蝉(ふぜん)というそうですが、木に蝉がとまっているように見えたことが由来のようです。
この夜目、目とは関係ないのにこんな名前を付けられた理由はなんでしょうか。
その昔、人は夜真っ暗になると見えないのに、馬が夜でも行動できるのは目以外にも暗がりを見ることができる別の目を持っているんだと信じられていたそうです。
そして脚にあるグレーっぽいものが夜でも見える目だと思い「夜目」となったそうです。
当然ですが、この夜目は夜になっても暗がりを見ることはできませんよ。
ではこの夜目はいったい何なのでしょうか。
馬は元々5本の指がありましたが、進化の過程で中指のみで身体を支えるようになりました。
諸説ありますが、この夜目は親指が退化したものではないかと言われています。
そのため夜目自体は何かの役割を持っているものではなさそうです。
ちなみに、この夜目は角質なのでたまにポロッと取れてしまうこともあります。
まとめ
大きくて優しい目をしている馬。
でも視野の広さ、視力、色覚、夜の見え方は私たち人間とは異なっています。
理由は野生だったころ、生き残るために必要な能力として備わり、それが名残として今でも残っているからです。
その違いに驚くこともありますが、人間と馬の違いを学ぶことで、より馬への理解が深まり仲良くなれそうですね。
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