引退した馬がのんびり過ごす、養老牧場ってどんなところ?
みなさんは、引退馬たちが余生を過ごす『養老牧場』をご存知ですか?
なんとなく聞いたことはあるけれど、詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。
養老牧場とは、一体どんなところなのでしょうか。
その実態に迫ってみましょう。
この記事で分かること
・馬たちの過ごし方
・馬の平均寿命
・馬の年齢の数え方
養老牧場とは?
養老牧場とは高齢やケガで使役できなくなった馬たちが余生をのんびり過ごせる養老施設です。
養老牧場には、乗馬や競技、競走、種付、繁殖など、いろんな仕事を全うした馬たちが集まってきます。
養老牧場で過ごす、馬の一日をご紹介!
養老牧場にいる馬たちはどのような生活を送っているのでしょうか。
養老牧場も、生産牧場と同様にそれぞれの牧場によって管理体制が違います。
朝晩は厩舎にもどす牧場もあれば、健康状態に問題のない馬は昼夜放牧をしている牧場もあります。
給餌は1日の量を朝や昼、夕方のタイミングで2〜4回に分けて与えるところが多いようです。
日々の体調チェックやお手入れは、放牧前と集牧後に行っているところが多いでしょう。
放牧時間も天候や季節によって午前のみ、午後のみ、朝〜夕まで、昼夜放牧など柔軟に対応しているようです。
複数頭を一緒に放牧する場合、強い馬が弱い馬にちょっかいを出して、ケガをさせたりする可能性があります。
そのため、馬の相性や力関係などを考慮してどの馬を一緒に放牧させるのか、慎重な判断が必要です。
新しくきた馬は、すぐにほかの馬と一緒に放牧はせず、まずは場所に慣れてもらうことを優先します。
その間に性格などを見極め、合流する放牧地を決めます。
ほかの馬と放牧するときは、放牧地が一時的にバタバタしますが、いつの間にかカップルになっていたり、仲良しのお友達を見つけていたり、たまにケンカもしたりしながらもじきに新しい環境に慣れていくそうです。
高齢馬のケガや病気は即、命の危険につながります。
そのため、定期的な歯のチェックや削蹄のほかにも、何か変化や異常があれば獣医師の診察を受けられる態勢が整えられています。
たくさん働いてくれた引退馬たちが1頭でも多く、1年でも長く、幸せな余生を過ごせるといいですね。
馬は何歳まで生きる?馬の平均寿命
馬の平均寿命は20〜30歳と言われています。
人間の年齢に換算すると約60歳〜85歳になるそうです。
世界一長生きした馬としてギネスに登録されているのが、イギリスのオールドビリー。
運河で舟を牽引したり、炭鉱で石炭を巻き上げたりする使役馬だったそうですが、なんと62歳まで生きたそうです。
しかも、仕事を59歳で引退するまで続けていたのは驚きです。
現在も頭部の骨格標本はマンチェスター博物館に、頭部の剥製はベッドフォード博物館に展示されています。
馬の種類でも平均寿命が違う
馬の種類でも寿命が変わります。
日本で最も長生きしたのは元競走馬でサラブレッドのシャルロット号(競走馬名はアローハマキヨ)。
2019年に40歳で亡くなりましたが、前日までごはんも完食して普段通りに過ごしての大往生だったそうです。
ちなみに正式な記録は残っていませんが、世界一のご長寿サラブレッドはオーストラリアのタンゴデューク号と言われており、42歳まで生きたとされています。
2022年9月には名古屋けいば所属のヒカルアヤノヒメ号が国内最高齢での出走記録を更新(18歳5ヶ月17日)しました。2023年も現役です。
このようにサラブレッドにも長生きの馬や長く競走できる馬もいます。
しかし、若いときから厳しいトレーニングを積んでいるため、ケガや心臓系の病気によって若くして亡くなる馬も少なくありません。
また、競走馬が活躍できるのは、多くの場合7歳くらいまでです。
引退後に食肉処理される馬もいることから、平均寿命まで生きられる馬はほんの一握りでしょう。
そのため、一般的には乗馬の方が長生きだと言われています。
《豆知識》馬の年齢の数え方
馬の年齢の数え方は独特です。
その年に生まれた馬たちは「当歳」と呼びます。
そして、当歳だった馬たちは生まれた次の年が明ける1月1日に、みんな一斉に「1歳」になります。
つまり、今年生まれた馬たちは1月生まれでも5月生まれでも、2024年1月1日にみんな1歳になるわけです。
さらに2000年まで、馬の世界では生まれた年を「1歳」とする数え年を使っていました。
国際化の一環として欧米と同様に満年齢とすることにしましたが、現2歳のG1レース「朝日杯フューチュリティステークス」は、それまで「朝日杯3歳ステークス」という名称でした。
サラブレッドには血統書があるので、必ず年齢が分かります。
しかし、血統書がない馬の年齢はどう判断するのでしょうか。
体の一部分を見るのですが、どこだか分かりますか。
…答えは歯です。
馬の歯の咬合面には黒窩(こっか)と呼ばれる変色があります。
この黒窩のすり減り具合により年齢の推定ができるそうです。
また、前から3本目の前歯(切歯)の根本には、10歳前後から溝が形成されます。
この溝が歯の真ん中くらいまで伸びてくると、おおよそ15歳とされているそうです。
歯の管理は養老牧場でも蹄の管理とともに気を付けているそうです。
歯が悪いと、飼い葉を喉に詰まらせたり、誤嚥したり、栄養の吸収率が落ちたりします。
実際に長生きをした馬たちにはきれいな歯をしている馬が多いとか。
高齢馬にとっても歯は命なのですね。
まとめ
この記事では、人間のために働いてくれた引退馬たちが余生を過ごす養老牧場について、ご紹介しました。
養老牧場のスタッフのみなさんは1頭でも多くの引退馬たちを救いたくて、頑張っていらっしゃいます。
是非、機会があれば幸せそうな馬たちを訪ねてみてください。
そして自分にできる形でのサポートをご検討いただけると嬉しいです。
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