馬は実は小動物だった?馬の祖先と馬の進化について
馬が好きだけど、あのサイズだと飼うのはなかなか難しいですよね。
もし馬が手乗りサイズだったら、ネコくらいだったら…と馬好きなら1度は考えたことがあるのではないでしょうか。
馬の祖先は実は今ほど大きくなかったそうですよ!
今回は馬の祖先や進化について考えていきたいと思います。
この記事で分かること
・中くらいに進化したウマ「メソヒップス」
・草食になった「メリキップス」
・とうとう指が1本に「プリオヒップス」
・現代のウマたちの直系の祖先「エクウス・カバルス」
馬の最も古い祖先は「ヒラコテリウム(エオヒップス)」
現在、最も古い馬の祖先と言われているのが「ヒラコテリウム」。
「エオヒップス」と呼ばれることがあります。
ちなみに和名は「あけぼのウマ」です。
ヒラコテリウムは現存する哺乳類の目(もく)のほとんどが誕生したとされる始新世(約5,600万年前から約3,390万年前)に生まれたと言われています。
5,200万年前にはすでに北米の地を駆け回っていたようです。
ヒラコテリウムの特徴は?手乗りサイズだったって本当?
ヒラコテリウムは体高30〜45センチ程度でキツネや犬(柴犬は体高40センチ前後)の大きさでした。
かろうじて「手乗り」とも言えるサイズ感ですね。
発見された当時はゾウに近い生き物である「ハイラックス」の仲間だとされており、「ハイラックス様の獣」の意味でヒラコテリウムと名付けられたそうです。
馬との大きな違いは指の数。
前肢には指が4本、後肢には指が3本ありました。
もともと5本あったものが、前肢の第1指、後肢の第1指と第3指が退化し、完全に消えていました。
爪は犬のようなカギ爪ではなく、小さな蹄がすでについていました。
また、走るための進化もすでに始まっていました。
体に対して四肢はこの時から長く、椎骨や背中から後躯にかけての筋肉が発達しており、すでに捕食者から走って逃げていたことが分かっています。
しかしとても興味深いことに、このころは群れを作って生活することはなく、各個体が自分のテリトリーで暮らす単独生活者だったそうです。
ヒラコテリウムとエオヒップス、名前が2つある理由
正式な学名はヒラコテリウムですが、「エオヒップス」と呼ばれることもあります。
ヒラコテリウムは1838年と1839年にイギリスで見つかった化石を鑑定した生物学者のリチャード・オーウェンが名付けたものです。
ヒラコテリウムはヨーロッパではウマ科の動物とは考えられていませんでした。
一方、エオヒップスは北米で見つかった始新世のウマ科動物の化石に付けられた名前です。
イギリスでヒラコテリウムが見つかった少し後に北米でもウマ科動物の化石がたくさん見つかりました。
この中にあったのがエオヒップスの全身化石でした。
その後、エオヒップスは北米で最古のウマ科動物の化石であることが断定されました。
しかし、ヒラコテリウムのように前肢に3本の指、後肢に4本の指、指先に小さな蹄がついていたことなど共通点が多かったから、ヒラコテリウムとエオヒップスの化石を比較した学者が同一の動物ではないかとの説を発表。
現在では、この説が広く受け入れられています。
先にヒラコテリウムと名付けられたため、正式にはヒラコテリウムと呼ばれます。
しかし、一般的にはエオヒップスと呼ばれることも多いようです。
その後、ヒラコテリウムはヨーロッパで絶滅したと言われています。
ウマの進化は北米へと舞台を移していきます。
3本指に進化!体も大きくなった「メソヒップス」
ヒラコテリウムは5,000万年前に大臼歯を持つようになった「オロヒップス」、さらに大きな臼歯を持つ「エピヒップス」に約4,700万年前ごろに進化しました。
そこから、4,000万年前ほどに進化して生まれたのが「メソヒップス」です。
意味は「中くらいに進化したウマ」。
始新世後期から漸新世(3,200〜2,400万年前)前半ごろに、北米では天候の変化により森林が草原に変化し、イネ科の植物が現れます。
草原では森林と比べて、身を隠せる場所が少ないため、捕食者からより速く逃げる必要がありました。
そのため、メソヒップスはより速く走れるように進化しました。
肢はより長くなり、体も体高50センチまで大きくなりました。
前肢の第5指は退化して、第3指が長くなり、形も現在の馬の蹄に近くなってきます。
このころには、首や鼻も長くなり、頭蓋骨も現在のウマに非常によく似ています。
草食性に変わり歯が変化!「メリキップス」
その後、3,600万年前にメソヒップスの亜種から進化し、硬いものをすりつぶせる歯冠を持つようになった「ミオヒップス」。
ミオヒップスから森林に適応した「カロバティップス」、草原に適応した「パラヒップス」に分化していきます。
パラヒップスはすでに小さなポニー程度のサイズになっていました。
中新世の2,500万年前〜2,000万年前には、草原に残ったパラヒップスが葉から草に主食を変化させて「メリキップス」に進化します。
さらに硬いものをすりつぶせるように臼歯はさらに大きくなり、歯冠はさらに高くなります。
メソヒップスと同様に指の数は前肢、後肢とも3本でしたが、第3指がさらに長くなり、短くなった第2指と第4指は走っているときだけ地面についているため、第3指への依存度は高まっていました。
現代の馬と同じ1本指に。「プリオヒップス」
1,200万年〜700万年前には「プリオヒップス」が出現します。
プリオヒップスは現在のウマの直接的な先祖と言われています。
それもそのはず、プリオヒップスはとうとう指が1本になり、第2指と第4指は消滅しました。
体高は120cmほど。四肢はより長くなり、さらに走ることに特化した体へと進化していきます。
現代のウマの祖先であるエクウスに非常に似ていますが、頭蓋骨の特徴や歯の形に違いがあるため、ウマの直接的な先祖ではない、という説もあるそうです。
ついに約100万年前に登場!現代馬の先祖「エクウス・カバルス」
さらに進化を進めて約150万年〜100万年前には現代のウマの祖先である「エクウス・カバルス」が出現します。
エクウス・カバルスには現代のウマの特徴を全てみることができるんですよ。
首は長く、目は側面についており、蹄には蹄叉も確認できます。
頭蓋骨にも現代のウマと同じ特徴がみられます。
エクウス・カルバスはエクウス・フェルス、つまり「ノウマ」の亜種と言われています。
世界中に広く生息していたノウマですが、北米に生息していた種類は、1万2,000年〜1万1,000年ころに絶滅したことが分かっています。
原因ははっきりしていませんが、そのころに大きな気候変動があったか、北米に移ってきた人類が乱獲したからではないか、と言われているそうです。
ヨーロッパやアフリカなどで生き残ったノウマたち。
その後家畜化され、騎乗されるようになっていき、ヒトと共存していくようになります。
17世紀ごろには再び、北米にヨーロッパからウマが持ち込まれました。
まとめ
現在のウマの姿になるまで、ウマの祖先たちは厳しい環境に適応して生き残ってきました。
限られた食料しかない時代に体が小さかった祖先たちは草を主食にして食料の確保ができるようになりました。
その代わりに、敵から逃げる必要性が高まり、肢が長くなり、体が大きくなり、速く長く走れるようになって生き残ってきました。
種として進化してきた結果が今の美しい「馬」を創り出したんですね!
このページをシェアする