馬術競技のひとつ、エンデュランスってどんな競技?
馬好きなら、きっと一度は聞いたことのあるエンデュランス競技ですが、実際にレースに参加したことのあるライダーやレースを観戦したことのある乗馬愛好家は少ないのではないでしょうか。
今回は、そんなエンデュランス競技についてご紹介します。
この記事で分かること
・エンデュランス競技のルール
・獣医検査の内容
・日本や世界で行われるエンデュランスの大会
エンデュランス競技とは
エンデュランス競技は、よく「馬のマラソン」と言われます。
ヨーロッパやアメリカで長距離の郵便物を馬で運んでいたことから派生して、19世紀ごろからエンデュランス競技が行われるようになったと言われています。
指定された長距離コースをループと呼ばれるいくつかのセクションに分けて、そこを人馬が走破していきます。
馬のスタミナ、コンディション、忍耐力、調教具合やライダーの戦略などが試されます。
馬術競技の一種ですが、オリンピックでは採用されておらず、なかなか目にする機会も少ない競技です。
マイナーな競技ではありますが、日本馬術連盟と全国乗馬倶楽部振興協会の2団体がエンデュランスの騎乗者ライセンスを発行しており、徐々に競技人口も増えてきています。
初心者向けのトレーニングライドは20kmで行われますが、上級者向けのレースは全長160kmにもなります。
エンデュランス競技の特徴
エンデュランス競技の特徴は、コースを全て走り終えただけでは完走にならないことにあります。
各ループ完走ごとに獣医師がインスペクションを実施して、馬の健康状態を確認し、パスできれば、次のループを走破する許可が与えられます。
ゴールを切ったあとにもインスペクションが行われ、ここでパスできなければ、完走とはなりません。
速いペースで走破するとコンディションに影響を及ぼすかもしれません。
ゆったりとしたペースで走破するとコンディションへの影響は少ないかもしれませんが、順位が下がってしまったり、規定の時間内に走破できなかったりします。
どれくらいのペースで走破するか、コースのどこを走って、どこを歩くのか、レースの戦略はライダーに委ねられ、それが結果を左右します。
エンデュランス競技に欠かせない存在!「クルー」について
エンデュランス競技では、「クルー」と呼ばれ、インスペクション前に馬のコンディションを整える大切な役割を担うスタッフがいます。
エンデュランス競技では、インスペクションをパスしなくてはならないため、クルーたちによるサポートが不可欠です。
クルーたちは、選手から馬を受け取ると、リカバリーセクションと呼ばれる場所で、インスペクションを受けるまでの一定の時間で心拍数を下げたり、肢を冷やしたりなどして、馬のコンディションを整えます。
エンデュランスはライダーや馬だけではなく、クルーも含めたチーム戦です。
エンデュランス競技のルール
馬術連盟公認や主催の大会の場合、エンデュランス競技に参加する乗馬は、連盟に登録されており、5歳以上でなくてはなりません。
出場する大会や距離によっても馬の年齢制限が違いますので、必ず実施要綱を確認しましょう。
長距離のレースに参加する場合は、人馬ともに完走歴が必要な場合もあります。
また、馬インフルエンザのワクチン接種を記録した健康手帳も携帯しなくてはいけません。
馬が会場に到着したあとに、1頭1頭、手帳と実馬を確認します。
レース前日には発走前の審査があります。
健康状態に問題がないか、馬が競技に適しているかの審査をパスすると翌日のレースに参加できます。
心拍数は64拍/分以下でなくてはなりません。
当日はスタートから制限時間以内のゴールを目指します。
各ループ走破後に獣医師によるインスペクションがあり、健康状態に問題がないとされた場合のみ、次のループのスタートを切ることができます。
最終ループ終了後のインスペクションをパスすれば、晴れて完走となります。
水を飲むポイントもいくつか用意されており、状況に応じて歩いたり、馬を引いたりすることもライダーの判断で自由です。
また、クルーはコース上の指定された場所のみでのサポートが許可されていますが、それ以外の場所では、落馬や放馬などのアクシデントがあった場合もサポートはできません。
ただし、このような場合には近くにいるライダーが手を貸すことが許可されています。
また、前にいる馬を抜く場合やほかの馬との距離が近くなる場合はライダー同士がコミュニケーションをとり、事故を防ぐことも大切です。
獣医検査の内容は?
出走前の審査には健康状態や競技の適性をはかる検査を獣医師が行います。
レース当日は、各ループ走破後の検査に心拍数の測定、速歩での歩様検査、呼吸機能、代謝機能、体温といった健康状態や怪我の有無を確認する審査があります。
心拍数は基本的に各ループ走破後は15分後までに64拍/分以下、最終ループ走破後は20分後までに64拍/分以下でなくてはなりません。
さらに最終ループ走破後は3名の獣医師によるインスペクションが行われ、パスしなくてはなりません。
心拍の測定や健康状態のチェックが終わると、速歩での歩様検査のエリアに移動し、歩様検査の審査が行われます。
そこで問題がなければ、ホールドタイムと呼ばれる規定の時間で馬を休憩させてから、次のループをスタートします。
世界の代表的な大会
世界の代表的な大会には世界馬術連盟が認定しているエンデュランス世界選手権があります。
世界選手権には若いライダーやジュニアライダー、若い馬向けの大会もあります。
エリアごとにも選手権が開催されており、今年の11月にはタイのパタヤでエンデュランスアジア選手権が開催されます。
馬術連盟の公認ではありませんが、エンデュランスの選手なら挑戦してみたいと思う大会もあるようです。その筆頭がアメリカのテヴィスカップ。
24時間で環境の厳しい100マイルのコースを走破しなくてはならず、「完走こそが勝利」だとされている、完走の難しいコースです。
ゴールドラッシュの時代によく使われていた街道がコースになっており、シエラネバダ山脈を越えなくてはならない人馬には非常に厳しいコースなのだそう。
もう一つがモンゴルダービー。
13世紀にチンギス・カンが情報を伝達するのに開拓したコース約1,000キロをたどるレースで、40キロごとに馬を替えて走破します。
現地の方から借りる馬の馴致度合いもそれぞれ違い、それもレースのうちなのだとか。
欧米から参戦するライダーには、床に寝なくてはならない文化的な違いによる脱落も少なくはないようです。
10日程度に及ぶレースは過酷を極めます。
日本でも競技観戦できる場所はある?
日本でもエンデュランスの大会が行われています。
日本馬術連盟が認定や主催をする大会には、「伊豆パノラマ・ライド(4月4日~5日)」、「NEFはまなす杯2025(4月19日~20日)」、「第26回全日本エンデュランス馬術大会2025(10月4日~5日)」があります。
このほか、ローカルで行われている競技会もたくさんあります。
長距離を走破するという競技の特性上、レースしている人馬をたくさん見ることは難しいかもしれませんが、主催者に見学できるポイントを確認してみるといいかもしれません。
日本エンデュランス・ライド協会では、大会の見学ツアーを組むこともあるようです。
また、全日本や世界選手権はライブ配信されることもあるので、是非、チェックしてみてください。
まとめ
今回は、馬術競技の中でもなかなか目にすることのないエンデュランスについて、深掘りしてみました。
エンデュランス体験コースを提供しているクラブもありますので、興味のある乗馬愛好家の方は、是非、お試しください。
エンデュランスは開催場所が限られてしまうため、生で見学する機会は少ないかもしれませんが、まずはインターネット配信で観戦することをおすすめしたいです。
ご自宅から気軽に観戦できますし、ライダーの戦略、クルーのチーム力などほかの馬術競技とは違う楽しみ方が見つかるかもしれません!
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