基本の動作⑤【~馬にたずさわる人全てが調教者~31】
まず、少し復習から。
馬にバランスの取れた状態でまたがり、しっかり前方向へ馬を推進し、この前に出ようとする力を受け止めることで、前回お話しした前後のシナリを完成させることが出来ます。
このシナリによって馬が後躯を躍動させ踏ん張りのある全身を使った迅速で力強い動きが出来る状態の構えを持って運動する事が出来ます。
しかし、簡単に良い状態のシナリが完成する訳ではありません。
推進がしっかり出来て受けとのバランスが取れていることが重要です。
手首を折ってしまったり、脇を開いて拳で引っ張ってしまったり、拳を固めてブロックする様な力の入れ方一つで馬に受け入れてもらうことが出来なくなってしまいます。
あくまでも馬の前に壁を造る構えに馬が前に進もうとする気持ちをぶつけることで馬自ら顎を譲りウナジで踏ん張る態勢をとり後肢を踏込み力強く歩ける状態が出来るのです。
一度しなりを持った鞭は、受け止めさえ安定していればわずかな推進でたやすく維持する事が出来ます。
この事を今まで何回もお話しして来ましたがこの前後のシナリをマスターすることで馬もあなたも肉体的な苦しい思いをすることなく、格段のレベルアップが期待できます。
何としてもこれは必ずしっかりマスターしてください。自分のためにも馬のためにも。
・馬は
1.人が要求するあらゆる動作に無理なく対処することが出来る。
2.ウナジ、首、背、腰、尻の筋肉が鍛えられ、より動きやすい身体に変化してゆく。
3.身体がバネ状態で運動しているため、人を乗せても背を痛める事を軽減出来る。
4.自ら譲った顎は柔らかくハミをくわえているため、騎手の拳が多少動いても口を痛めたり痛い思いをしない。
5.後躯で身体を動かす為、前肢への負担が軽減され痛めることが無くなる。
・人は
1.馬がバネ状態で運動しているため、反動がソフトになりお尻が跳ね上げられることなく正反動に着くことが出来る。
2.馬が自らハミをとっているため、拳を軽くすることが出来る。そのため上半身の力が抜け安定する。
3.馬の動きへの随行が楽に出来るようになったことで、自身の動きや馬の観察等に気をくばる余裕が出来る。
4.軽いタッチでしっかり推進と減却が出来る。
5.拳や肘での指示は軽い小さな動きで正確に出せる。
平成31年3月
長谷川 雄二
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