馬術入門(6)【~馬にたずさわる人全てが調教者~64】
前回の中央線上を直行進すると言うことが、経路を回る上で最も重要なことです。
真っ直ぐに動いていると言うことは、真っ直ぐに馬銜に出ていることです。
つまり、前後のシナリを作れる状態に有るのです。
前後のシナリは力の循環を生み馬の力やバネを無駄なく発揮するための重要な馬の構えです。
これが崩れずに安定して走行することが出来ていれば難易度の高い、いかなるパフォーマンスに対してもその馬の能力を最大限に発揮することが出来ます。
さらにこの前後のシナリは馬体に体幹つまり、ミキが出現している状態ですので左右のシナリも容易なものとします。
例えば、直線上の蹄跡からの”巻乗”これを正しく、美しく、人馬共に無理なくのびのびと優雅に運動するには、何を意識してどの様に行う必要が有るのかを考えてみました。
この運動に必要な扶助動作62.馬術入門4における騎手の動作
14.の項とさらに内方拳は軽く握り馬が前に動きやすいように拳を譲るようにわずかに前に方向に差し出す。16.の項 17.の項 20.の項 21の項、22の項。以上が必要な動作です。
・誘導は、何処から”巻乗”に入るか、どのくらいの大きさなのか”巻乗”に入った所と同じ所に出る綺麗な円運動の図形を確認して誘導します。
・態勢は、要求されている難易度により異なりますが、馬が真っ直ぐに馬銜に出て体幹が完成していること、この状態を崩さずに円の大きさに一致した左右のシナリ、つまり馬体が弧を描くように輪線上を歩けなければなりません。
難易度が上がれば馬の頭の位置は、難易度に比例して徐々に高くなり後躯が沈み、結果として起揚しなければなりません。最も重要なことは後肢が活発に躍動していることです。
・スピードは、これも勿論難易度、”巻乗”の大きさ、求められている伸縮の度合いにより異なりますが、この運動では安定した一定のリズムが最も重要なことです。
・精神状態は、正しく経路を回ろうと思えば常にボーとした状態ではいけません。
上記の求められる運動を正確にするためには常に騎手の支持を持っていなければなりません。
普段の運動で騎手が脚を放して馬を蹴って緊張させて推進しているような動かし方をしていると硬い急いだ動きになったり、不規則なリズムの動きをしてしまいます。
また脚が少しでも離れると馬はまた突然蹴られるのかと更に緊張し訳のわからないわずかな事で暴れ出したりしてしまうようになってしまいます。
正しくは、リラックスして後肢が活発に躍動した全身を使った動き密着した真上から圧を掛けながら安定した不動のふくらはぎを保った上で必要に応じて踵を馬体に強く押し当て坐骨と協調して前方向へ絞り出すように推進します。
このふくらはぎの密着で馬は安心して指示を待ってくれます。馬が騎手に集中してわずかな騎手の動きに冷静に正確に動いてくれるようになります。
令和4年1月
長谷川 雄二
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