馬術入門(7)【~馬にたずさわる人全てが調教者~65】
蹄跡を行進しながら色々な図形を描く際や遇角を通過する時に於いても、先ずはシナリやすい後躯を脚の内方姿勢により作り、そのシナリにより波及した前躯のシナリを活かす様に拳が協調して次の進むべき方向を示すと共にどんな運動をするのか明確に馬に伝えなければなりません。
この事を成功させるために最も必要な動作が、馬に前に進めと指示する推進です。
以前にお話しした、騎手の姿勢をしっかり取り、真上から真っ直ぐ膝を下方へ伸ばすように鐙を踏み下げ、ふくらはぎを馬体に密着させたまま馬の反応に応じた強さにて踵で馬体を圧迫しながら坐骨を鞍に押しあてるように自身のおへそを前につき出(ブランコを前に強く漕ぐように)します。
踵で馬を蹴るようにして前に動かそうとする事は一時的には有効ですが、馬のリズムを狂わせるリスクが有り、頻繁に使用する事でやがて馬の反発をかい、逆に前に動こうとしなくなってしまいます。
さらに馬が脚に異常に警戒してピリピリしたり、硬い動きとなってしまいます。
鞭も多用すると同じような結果となってしまいます。
拍車や鞭はあくまでも副扶助です。色々な道具にしても手助け程度に使用する事で有効な素晴らしい道具となります。
過度な使用には充分注意してください。
次に、このようにして推進した動きを両方の馬銜で均等に受け止め馬を真っ直ぐに前に進めなければシナリを作る段階に至りません。
真っ直ぐ動く事で馬に体幹が出現し、この体幹を維持しながらの状態で運動することができるのが唯一左右の内方姿勢(左右のシナリ)により実現出来るのです。
また、馬体の伸縮(前後のシナリ)を実現出来るのは唯一減却となる扶助なのです。
この扶助もやはり馬の体幹をしっかり維持しながら両肘を腰と一体にするようにして馬が馬銜に出てきた力を両ハミに均等に馬が真っ直ぐであるように受け止めます。
さらに、この力を坐骨へ返すように構え、上体を真っ直ぐ垂直に維持しながらフクラハギを馬体に着けたまま膝をしっかりと下方へ、わずかに後方へ動かすように鐙を踏み下げます。
拳はわずかな力で、あくまでも同じ位置を保つための力加減です。
肘の角度と位置が変わらないように保つ事が大切です。
あくまでも馬の前に壁を作るイメージです。
このレベルは収縮までの運動を調教された馬であれば、騎乗者が未経験の動作であっても正しく上記の扶助を発動出来れば驚くほどスムーズに反応してくれます。
逆に馬が未経験の場合は、正確な正しい扶助をやや強めに使用します。
先ずは、常歩からの停止、発進、その後、後退も入れて運動します。
この時は、明確な扶助の違いを伝えられるようにしなければなりません。
正しく反応したらオーバーに褒めることは勿論、扶助の力加減を徐々に弱く、動作も小さくしていきます。
これ等の運動は ”あなたの、そして馬の将来” にとってとても重要なものとなります。
多くの時間を使ってでも必ず身に付けて、身に付けさせて下さい。
令和4年2月
長谷川 雄二
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