馬術入門(15)【~馬にたずさわる人全てが調教者~73】
もう少し前回の続きをお話しします。
前回は馬が10レベルであるとしてのお話しでしたが、今回は逆に騎乗者が10レベルとしての可能性について考えてみましょう。
・騎手10レベル―馬10レベル=パフォーマンス10
※このレベルではできる、できないではなく、どれだけ魅力的か、感動的かです。
あとは馬の持って生まれた動きや、性格の違いが大きな表現力の差となってきます。
・騎手10―馬8=8以上
※馬がここまでのレベルに達していると言う事は肉体的に多少レベルの高い要求でもこなすことが出来るはずです。
また精神的にも騎乗者が何を言わんとしているか聞こうとする姿勢が有るはずです。
ですから、乗り手の正確な扶助が、明確で強い意思を示せたら、馬自身の現状のレベルを上回るパフォーマンスをも発揮することも出来てしまいます。
現実では、馬のレベルが8としてもそれが新馬から順調に調教が進められて来ての8なのか、元々問題があった馬でやっと出来るようになった8なのか、元は10レベルの馬であったのが8にダウンしたのか、それぞれ馬の過去の出来事、調教過程やら何かトラウマを抱えていた等があるので簡単には、イコールが8にはならないでしょう。
しかしそこに馬との信頼関係が出現するようになると乗り手が諦めずに丁寧に運動を続けることで必ずイコール8にはなります。
8レベルまで身に付けてきた馬ですので調教を進める事で10レベルになる可能性は大いにあります。
しかし最高レベルの10となると、諦めずに努力すればイコール10になるかと言われてもそう簡単にはいきません。
その馬の年齢、今まで受けてきた調教、持って生まれた素質等により将来10レベルの運動が出来、出来ないの判断をして調教を考えなければなりません。
調教過程に於いて間違ってしまった場合、骨格の問題で無理がある場合、性格の問題がある場合等では、かなりの時間と根気が必要です。
馬の年齢と調教に掛かる時間を考えて判断してください。
・騎手8―馬6=8
※特に大きな問題を抱えた馬でなければ、騎手のレベルにスムーズに並んで来てくれます。
・騎手6―馬9=6
※騎手と馬のレベルが逆転してしまうと、この馬に乗り始めの2年程は馬レベルに乗り手が引き上げられ本人自身も急に上達したかのように自信過剰に陥ってしまいます。
謙虚さがなくなって2年程たつと馬も適当で不明瞭な扶助に対して不信感から不安感、更に反発心が芽生えてしまうのです。
この程度の騎手レベルでは馬レベルに騎手が並ぶ事は難しいでしょう。
騎手が100回馬にムチャをすることで1回の正しいことを馬から教わる事は出来るかもしれませんが、その事で馬は1つの良いところが失われてしまっているのです。
ですから一刻も早く騎手がよい指導者の元自身のレベルを上げる必要があります。
馬の反発心が芽生える前にも、レベルを下げない為にも。
令和4年10月
長谷川 雄二
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