馬の歩き方、走り方の種類を学ぼう!
乗馬のレッスンで習うのは常歩、速歩、駈歩の3歩法です。
でも、実は馬の歩法にはもっと種類があるのをご存じですか。
今回は普段はあまり目にすることがない珍しい歩法や、高い技術を要求される競技での歩法もご紹介します。
この記事で分かること
・アンブル歩法って?
・馬場馬術で使われる特殊な歩法
馬の歩法(歩き方、走り方)は大きく分けて4種類
馬の歩法は大きく分けて4つ。
レッスンでもよく使う常歩(なみあし)、速歩(はやあし)、駈歩(かけあし)の3つと競馬で用いる歩法である襲歩(しゅうほ)。
それぞれに明確な定義があります。
詳しくみていきましょう。
常歩(なみあし)<ウォーク>
常歩は「歩き」とも呼ばれます。
英語でもウォークと呼ばれ、最も基本的な歩法です。
110m/分ほどの速度で、右後肢→右前肢→左後肢→左前肢の順番に4拍子で動く歩法。
馬にとっては一番疲労度の小さい歩き方です。
しかし、常歩は全ての歩法につながる歩き方です。
しっかりキビキビとして活力のある歩きと馬なりのダラダラした歩きでは、他の歩法に移行しようとする際の馬の反応がまったく違います。
そういった意味では、奥の深い歩法です。
速歩(はやあし)<トロット>
乗馬というとこの歩法を思い浮かべる方も多いと思います。
乗り手が立ったり座ったりしているときの馬の歩法が速歩です。
英語ではトロットと呼びます。
220m/分ほどのスピードがあり、2肢のペアが対になって2拍子で動く走り方です。
対角線にある肢がペアになって動いている走り方は、斜対歩(しゃたいほ)と呼びます。
一般に斜対歩の速歩をとる馬が多いと言われています。
ただし、特定の種類の馬では、右側の前肢・後肢と左側の前肢・後肢が対になって動く走り方である側対歩(そくたいほ)もよくみられます。
速歩の乗り方には、立って反撞を抜く方法(軽速歩)と座ったまま反撞を抜く方法(正反撞)の2種類があります。
駈歩(かけあし)<キャンター>
駈歩は乗馬で使う歩法のうち一番速い走り方で、340m/分ほどのスピードが出ます。
英語ではキャンターと言います。
左後肢→右後肢と左前肢→右前肢の順番で動くのが右手前の駈歩、右後肢→左後肢と右前肢→左前肢の順番で動くのが左手前の駈歩です。
3拍子のリズムを刻みます。
馬によって、手前の得意・不得意もあり、明確に指示をださないと逆手前での駈歩が出てしまうかもしれません。
駈歩発進には、乗り手が主導して馬の準備を整えるのが必要なことに加えて、馬の個性も影響してくることから、うまくいかないこともあります。
しかし、練習を重ねて、馬といいリズムで駈歩ができたときの爽快感は格別です。
襲歩(しゅうほ)<ギャロップ>
襲歩は競走馬のレースでの走り方で、スピードは時速60〜70kmにも達します。
JRAの公式サイトによると、駈歩と襲歩の差は、
1)駈歩では最低でも1肢が着地しているが、襲歩では1肢も着地しないタイミングがある
2)駈歩では3肢が着地するタイミングがあるが、襲歩では最高でも2肢しか着地しない
の2点だそうです。
基本的には四肢の運び方も駈歩と同じで、手前もあります。
では、どうやって襲歩を出すのでしょうか?
調べてみたところ、意外にもシンプルでした。
駈歩の合図をさらに強くいれると襲歩に移行していくそうです。
その他の歩法について
基本の4歩法以外にも、特定の種類の馬にしかみられない珍しい歩法や馬場馬術競技でしか使わない難易度の高い歩法もあります。
アンブル歩法とは
アンブル歩法は、常歩と速歩の間の歩法です。
通常は常歩から速歩の順番で移行するのですが、この移行の合間にアンブル歩法を挟む馬もいます。
この歩法は一見すると、同じサイドの肢を同時に着地する側対歩のように見えますが、同じサイドの肢がほんの少しズレたタイミングで着地します。
実は最近の研究結果で、アンブル歩法をとる馬には、DMRT3遺伝子に変異がみられることが分かりました。
この遺伝子は四肢の動きの制御に関係しているそうで、日本土着の和種にもこの変異がよく認められます。
馬術競技で使われる特殊な歩法
馬場馬術の競技では、特殊な歩法の完成度も重要な評価基準になります。
今年、パリで行われるオリンピックでは、ヴェルサイユ宮殿をバックにした美しい競技場で行われる馬術。
馬術競技で使われる特殊な歩法の予習をしていきましょう。
ピアッフェ
ピアッフェとは、速歩のリズムで肢を上げて、その場で足踏みをする難易度の高い歩法です。
乗り手の扶助を理解し、体を動かせる馬でなくてはならず、全ての馬ができるものではありません。
速歩を維持する前進気勢を保ちながらも、その場に留まらせるほどに収縮させなくてはなりません。
繊細な扶助やハミ受けのみならず、馬とのパートナーシップが要求されそうですね。
パッサージュ
パッサージュは、一歩ずつ肢を高く上げている歩法。
やはり速歩を収縮して完成する歩法で、ここからさらに収縮していくとピアッフェになります。
パッサージュも難易度が高く、全ての馬や乗り手にできることではありません。
柔らかいパッサージュはとても優雅にみえます。
ピルーエット
ピルーエットは後肢を軸に360度回転させる非常に難しい歩法です。
一番高いクラスの競技会では、駈歩で旋回することが求められます。
ダブル・ピルーエットと言って、2回転する技もあります。
馬術で求められる色々な技術が細やかに要求される歩法で、やはり馬も乗り手も選ぶ歩法です。
軸足のズレが少ない方がいいピルーエットだとされています。
ハーフパス
ハーフパスは常歩・速歩・駈歩で四肢を交差させて斜めに動く歩法です。
このとき、馬の首は進行方向に屈曲しています。
この動きも馬にとっては自然な動きではありません。
そのため、ハーフパスに入る前に、肩を内に入れる馬の体勢をきちんと整えてあげることが重要です。
クロスをしている位置が深い方がいいハーフパスだと言われています。
まとめ
今回は基本的な4種類の歩法に加えて、特殊な歩法もご紹介しました。
特殊な歩法について、興味のある方は、実際に動画等でチェックしていただくと分かりやすいかもしれません。
JRAのホームページに掲載されている北原広之さんの「ドレッサージュホースに育てよう!」で、どのような歩法に挑戦する場合でも、最終的に運動をするのは「馬の意思」であり、乗り手は「きっかけ」を与えるに過ぎない、というメッセージがありました。
どのような歩法を練習する場合でも、馬に最低限の「きっかけ」で動いてもらえるように、普段から意識していきたいですね。
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